教科書のなかの文学/教室のそとの文学Ⅳ──夏目漱石「こころ」とその時代
6/26(土)~9/25(土)開催
開館時間 | 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで) |
観 覧 料 | 一般300円、中高生100円 |
休 館 日 | 日曜日・月曜日・7/20~9/18 ただし、9/20(月)は開館、翌9/21(火)を休館 |
編集委員 | 安藤宏・中島国彦 |
※7/20(火)~9/18(土)の「来館サービス」の休止に伴い、会期が9/25(土)まで延長となりました
「こころ」の言葉の世界に寄り添う
「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」「記憶して下さい。私はこんな風にして生きて来たのです」——夏目漱石の「こころ」を読んで、こうした言葉が忘れられない人は多いでしょう。小説の一節が、このように後々まで迫ってくるのは、小説の世界が一読してそれで終わり、全て解決ずみというのではなく、長く息づいて、私たち読者の内部に住み着くからです。これからもこの開かれた謎に満ちた世界とずっと対話していきたい、と思わせる何かがあるのです。
高校生になって、教科書で初めて「こころ」を読んだ人も多いと思います。若い時に買って読んだ文庫本を大人になって読み返し、これまで発見できなかったことを見出した人もいることでしょう。思い出せる作中の言葉があるというのは、すでに小説の言葉の世界に自分が目を凝らしていることを示しています。言葉との終わりのない対話、言葉の世界にいつも寄り添って考える姿勢こそ、漱石の求めたことなのです。作中の印象的な一節の背景を示す資料や、「こころ」が長く読みつがれた歴史をも紹介しつつ、この展覧会を通し一人一人が作中の生きた言葉を探し、人間の心に思いを深めていくお手伝いをしたいと願っています。
(編集委員 中島国彦)
展示構成と主な出品資料
二つの言葉から 「心」という言葉
漱石自身が「こころ」について語った一見相反する二つの言葉から「こころ」の作品世界に足を踏み入れます。また、漱石と「心」という言葉との深い関わりについて、漱石の文章や周辺資料などから紹介します。
・「心」連載第一回(大阪朝日新聞 1914年4月20日)
・夏目漱石 松尾寛一宛書簡 1914年4月24日 姫路文学館蔵
“あれは小供がよんでためになるものぢやありませんからおよしなさい”
・岩波書店『こゝろ』刊行時の新聞広告(時事新報 1914年9月26日)
“自己の心を捕へんと欲する人々に、人間の心を捕へ得たる此の作物を奨む”
・夏目漱石「人生」(龍南会雑誌 1896年10月 熊本大学附属図書館蔵)
・夏目漱石 英国留学時代のノートより「超脱生死」(1901-1902年頃 東北大学附属図書館蔵)
「上 先生と私」 「中 両親と私」 「下 先生と遺書」を読む
作品にちりばめられた印象深い言葉の数々から、豊富な資料とともに「こころ」を読みこんでいきます。
・「こころ」原稿 岩波書店蔵
・夏目漱石 津田青楓宛書簡 1914年3月29日
・明治天皇崩御関連資料
・乃木大将関連資料
・渡辺崋山「黄粱一炊図」 個人蔵
「こころ」の反響 教科書の中の「こころ」 他
「こころ」に寄せられた同時代評や、後世の映画化作品・戯曲等から作品が与えた影響の大きさを振り返ります。また、時代とともに変遷する教科書での指導方針や研究動向も紹介します。
「こころ」初版本を観察してみよう
貴重な『こゝろ』初版本を展示。漱石がみずから装丁した一冊には、まるで絶えず変化する“心”のありようが示されているかのようです。
*本展では原稿・書簡・絵画等の肉筆資料はすべてパネル展示でご紹介します。