芝居は魂だ! 築地小劇場の軌跡1924-1945


10/9(土)~12/18(土)開催

(左から和田精、汐見洋、 浅利鶴雄、 友田恭助、 小山内薫、 土方与志

 

開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
観 覧 料 一般300円
中学生・高校生100円
休 館 日 日曜日、月曜日、10/28(木)、11/25(木)
編集委員 武藤康史(当館理事)

本展について

最近、新国立劇場で三好十郎「斬られの仙太」の公演がありました。初演は築地小劇場です。彩の国さいたま芸術劇場でリーディング公演があったピランデルロ「作者を探す六人の登場人物」も築地小劇場で日本初演。SFの古典カレル・チャペック「ロボット」の日本初演も築地小劇場でした。今でもよく上演される久保田万太郎「大寺学校」、久保栄「火山灰地」、森本薫「怒濤」も築地小劇場初演でした。シェイクスピア、ゴーゴリ、イプセン、ストリンドベリ、チェーホフ、ゴーリキーなどの作品は日本では以前から上演されていましたが、築地小劇場でもさかんに取り上げています(このうち「民衆の敵」「令嬢ジュリー」「三人姉妹」などは築地小劇場が日本初演のようです)。築地小劇場は世界文学の窓であり、日本の劇作家を奮い立たせる空間でもあったのでしょう。

文学座、劇団民藝、俳優座、文化座は、築地小劇場で活躍した人たちが作った劇団(または築地小劇場で公演したことがある劇団)です。劇団四季も、築地小劇場創立時のメンバーの子息によって作られました。映画の世界にも築地小劇場出身の俳優が大勢います。たとえば小津安二郎監督『東京物語』(1953)に出演している杉村春子・東山千栄子・高橋豊子・長岡輝子・中村伸郎・山村聰・十朱久雄・東野英治郎は、みな築地小劇場で(あるいは名称変更後の同じ劇場で)舞台に立っていた俳優です。
                      
かつて世界の作品をどしどし紹介した築地小劇場。日本の作品も次々と上演した築地小劇場。今でいえば実験的な中劇場です。多くの観客がここから感動を持ち帰りました。大勢の俳優やスタッフがここから巣立ち、羽ばたいていきました。開場後もうすぐ百年になるこの劇場を、当時の写真、プログラム、本、雑誌、舞台装置模型などからふり返ります。
(編集委員 武藤康史)



●「築地小劇場ができる前」

劇場設立までの土方与志や小山内薫、さらに坪内逍遙・森鷗外・島村抱月・松井須磨子・市川左團次(二世)といった文学者や俳優たちの動向を紹介します。

小山内薫

坪内逍遙

●1924年6月13日 「築地小劇場」開場
「演劇の実験室」「常設館」を標榜し、ひと月におよそ三公演が組まれました。
第一回公演として小山内が演出したゲーリング「海戦」、チェーホフ「白鳥の歌」、マゾー「休みの日」の三作品を上演しました。

機関紙「築地小劇場」

 

●1930年以降
新築地劇団の徳永直原作「太陽のない街」や、村山知義らが結成し山本安英らが参加した左翼劇場の林房雄原作「都会双曲線」をはじめとするプロレタリア演劇が相次いで上演され、好評を博します。しかし警察によるプロレタリア文学と演劇に対する弾圧も次第に激化。1933年2月20日、小林多喜二が築地署に連行され拷問の末に死亡。築地小劇場で予定された3月15日の多喜二の「労農葬」開催は、当局の激しい妨害にさらされることになります。


●1945年3月10日 焼失
次第に激化する戦争の只中で新築地劇団の分裂と新協劇団の結成、築地小劇場の改築と株式会社化などを経て、1945年3月10日の東京大空襲により劇場は焼失することとなりました。


●築地小劇場を代表する俳優たち
築地小劇場を代表する俳優の山本安英・田村秋子・杉村春子・丸山定夫に関連する資料も紹介します。いくつかの資料からは俳優たちと劇場外の人々とのつながりも見えてくるでしょう。山本安英と勤め先の同僚であったのは、詩人の大手拓次でした。大手は山本安英をモデルとした「わらひのひらめき」(『藍色の蟇』所収)という詩を書きます。また原爆投下の9日前、丸山定夫が滞在先の広島から葉書を宛てたのは、山梨に疎開中の太宰治でした。


●検閲/言えなかったせりふ
劇場開設当初から客席の最終列には台本を手にした警官が着席し、舞台を常に見張っていました。初日を目前に控えての上演不許可や台詞の削除命令がしばしば下され、劇場側は急遽演目を変更するなど、言論弾圧が演劇の世界にも影を落とし続けることになります。本展では検閲により削除の憂き目にあった台詞の数々を紹介するコーナーを設けます。

同時開催 川端康成をめぐる書簡

 

メールはおろか、電話もまだ一般的ではなかった時代、人々のコミュニケーションを担ったのは手紙でした。そして川端康成はその数えきれないほどの来簡を、度重なる転居を経てなお、保存していました。

学生時代、青年作家時代の同人誌創刊をめぐる臨場感あふれる手紙、「雪国」や「古都」など代表作の創作の現場となった旅先から出された手紙、そして多くの作家との交流をしめす手紙。

本展では、作家・川端康成の文学的出発から戦後の円熟期にいたるまでを、遺された貴重な手紙からたどります。

 

*併設の川端康成記念室にて開催。特別展の観覧料(300円)で同時にご覧いただけます。